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エクゼクティブサマリー
韓国の資産運用市場では高齢化社会に備えた年金資産が一層積み上がり、それに伴い年金基金や信用協同組合等の機関投資家の影響力も拡大している。これらの機関投資家は通常、長期投資家と見なされるが、その資産運用戦略は歴史的に債券やローンといった保守的なポートフォリオに照準を定め、株式等のよりリスクの高い資産は敬遠してきた。だが低金利環境が続く中で、そうした保守的な資産運用ではもはや目標リターンを達成することができないとの認識が広がっており、昨今、韓国の年金基金はその保守的な資産配分戦略を再構築する動きを見せている。
資産配分の見直しにおいて、ポートフォリオの再構築が開始された当初は国内株式など伝統的資産が中心であった。これは、リスクが高いものの、伝統的資産はファンドマネジャーにとって比較的なじみが深かったことによる。しかし最近になって、不動産やプライベートエクイティといったオルタナティブ投資に資産運用の対象範囲を拡大しようと努力が向けられつつある。投資対象地域についても、情報へのアクセスが容易な国内マーケットから海外市場へと移っており、海外投資への配分が徐々に増えている。例えば、韓国の代表的年金基金の筆頭である国民年金公団(National Pension Service、以下「NPS」)は2002 年からオルタナティブ投資への配分を継続的に高めてきたことで知られている。私立学校教職員年金公団(Teachers’Pension)や公務員年金管理公団(Government Employees Pension Service)も、世界金融危機を受けて2008 年以降は縮小してきたものの、このところオルタナティブ投資を積極的に増やしていることで知られている。
本ペーパーではこうした背景の下、韓国の主要な公的年金基金がその中長期的な資産配分戦略においてオルタナティブ投資へ の配分を増やしていることの原因と、その関連する問題について分析しており、ポートフォリオにおけるオルタナティブ投資 の比率の拡大が国内機関投資家の将来戦略に対して持つ意味を明かにすることを目指している。